弁護士による成年後見のサポート 5つのポイント
成年後見制度は認知症の高齢者など判断能力の低下した方の意思を尊重し、その権利を守るための制度です。
普段はあまり意識しないかもしれませんが、私たちは契約社会の中で生きています。日常の買い物をしたり、病院で診療を受けたり、老人ホームに入所するのもすべて契約で成り立っています。
契約するためには判断能力が必要ですが、判断能力が衰えてしまった方は、適切な契約を結ぶことができず、かえって悪徳業者に騙されて契約するなど、消費者被害を受けることもあります。
また、在宅で生活したいのに施設に入れられてしまったり、又は、自分が希望しない老人ホームに入れられてしまったりなど、身の回りの生活のこともきちんと配慮されなければなりません。
成年後見制度は、家庭裁判所から選任された成年後見人が家裁の監督の下、高齢者などの判断能力の衰えた方の権利を擁護するという制度です。
元気なうちから成年後見制度のことを知っておくことが必要です。
① 成年後見人は自動的に付けてくれるものではなく、家庭裁判所に成年後見の申立をしなければなりません。申し立てができるのは、ご本人の外、4親等内の親族などです。
弁護士がサポートできる業務の一つがこの成年後見開始の申し立てについてのサポートです。
この申立手続については、必要な書類や費用のことなどは家庭裁判所のホームページや電話で問い合わせれば教えてくれますので、わざわざ弁護士に依頼しなくてもご自分で申し立てることもできます。
② ただ、自分で申立てができるという場合であっても、弁護士に申立を依頼される方もたくさんいらっしゃいます。やはり、きちんと説明を受けたとしても忙しくて必要な書類をそろえられないとか、専門家に頼むことによる安心感は代えがたいものがあるとのことです。
③ また、そもそも申立手続を弁護士に相談したり、依頼した方がよいケースというものもあります。
それは、ご本人が虐待を受けているというような難しいケースや、親族間で対立があるケース、またご本人が医師の診察を嫌がるなどして家庭裁判所に提出しなければならない医師の診断書の取得が難しいケースなど、法律専門家である弁護士の関与が必要となる場合です。
1時間当たり1万0500円(消費税を含む)
原則21万円(消費税を含む)
※但し、親族間の深刻な紛争がある、申立てを特に急ぐなどの特別の事情がある場合には26万2500円(消費税ほを含む)とさせて頂くことがあります。
裁判所に納付したり、住民票や戸籍を取り寄せるための実費は別途とします。
④ また、後見申立という視点だけにとらわれずに、この機会に、一度、ご本人の身の回りの総合的な法的問題点を洗い出すという意味でも弁護士に相談してみたらよいのではないかということを強く思います。
成年後見人や保佐人、補助人は家庭裁判所が選任するものであり、裁判所は独自に第三者の弁護士や司法書士、社会福祉士などの専門職を後見人等に選任することもあります。親族間に争いがあるような場合には、候補者が後見人等に選任されることはまずありません。
ただ、申立の際に、後見人等の候補者を立てることもでき、ご家族が成年後見人となるようなに候補者となることも、申立てを依頼した弁護士がそのまま後見人になってもらうよう候補者とすることもできます。親族の間に特に意見の相違がなければ候補者がそのまま後見人となることが多いかと思います。
必ず候補者がそのまま後見人となるというわけではありませんが、とくに親族の対立もなく候補者が後見人となることが想定されるという場合、もちろん、後見人をご家族がされることも多いのですが、弁護士を後見人とするという選択肢もぜひ考えて頂きたいと思います。
後見人を弁護士が務めるメリットはどのようなものでしょうか?
後見人報酬は裁判所が年1回決定するものですが、東京家庭裁判所の後見センターが公表している目安によると、後見人等が通常の後見業務を行った場合の後見報酬は月額2万円(年額24万円/管理財産が1000万円未満の場合)程度とされています。
管理財産額 | 通常の後見業務を行った場合の後見人報酬月額 |
---|---|
1000万円以下 | 2万円 |
1000万円以上5000万円未満 | 3万円から4万円 |
5000万円超 | 5万円から6万円 |
この後見人報酬を高いとみるか、安いとみるか、妥当と考えるかは人それぞれです。なお、この費用は、後見人が弁護士であっても司法書士であっても、社会福祉士であっても異なりません。
ご本人とって一番良い後見人が付けられることが最も大切なことですが、弁護士を後見人とするメリットをよく考えて頂き、それだけの後見人報酬を支払う価値があるかどうかということをよく検討して頂ければと思います。
家庭に高齢者がいて悩んでいる家庭の中には、だれにも相談できず家庭の中だけで悩みを抱えていたり、また、逆に他人に任せきりにしていたりといった極端なケースも多いように思います。
さまざまな後見事案を経験してきた法律専門家である弁護士に相談することで視野が拡がるということもあるのではないでしょうか。
最後にもっとも大切なポイントになります。
ご家族から相談を受けたとしても、弁護士はあくまでもご本人の利益やご本人の生活向上にとってプラスとなるかという視点から考えます。